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報告要旨 野上 和裕(2017年8月10日)

2017年度夏季研究大会報告要旨(2017年8月10日 北九州市立大学)
スペイン19世紀議会主義試論
                                       野上和裕

「研究上の問い」Research Question
スペインの議会制について、脆弱性・遅延・「ブルジョア革命の不在」といったスペインの特殊性を前提して「正常な議会制」との比較により欠落部分を探求する見方からの脱却を進め、他国と比較しても遜色のない議会制が強固に定着した国である可能性を踏まえて、スペインの議会制に存在する特質・「先進性」・問題点を点検しよう。

要旨
議会制と王権との関係は、両者を対立的に捉えるヒンツェ以降の歴史学の流行と異なり、むしろ中央権力=王権の成長や近代国家の成立が議会制を生んだと言える。スペインでは、カディス議会の招集、イサベル2世の王位継承権の確保の例を見ても、王権と議会制の結合が強く、相互に補強する存在であった。スペインの議会制を19世紀ヨーロッパにおいて見るとき、制限選挙であったことは逸脱例でない。少なくとも世紀半ばまで、スペインはもっとも選挙権が拡大し、平等化が進んでいた国のひとつであった。軍人の問題を別とすれば、スペインは議会主義の定着という点で他国と比較して強固であったとさえ言える。そこで、スペインにおける党派の対立をヨーロッパ全体の文脈で捉え直すと、ModeradosとProgresistasは、後者が前者よりも議会主義的であると言えない。Moderadosも、議会中心の政治体制を構想し、政党政治論を生み出した。Moderadosがカディス憲法の「国民主権」を否定し、議会”Las Cortes con el Rey”に主権を求めたのは亡命先のイギリスの混合政体論の輸入と言える。カディス憲法でカトリックが国教とされたことに自由主義の限界を指摘する見解もあるが、イギリスで審査法が廃止され、カトリック解放が実現するのは1828年と29年のことであり、もちろん現在でも国教が存在する。イギリスの議会制とスペインのそれとで大きく違うのは、イギリスで選挙権がいわば党利党略として政治家の信条に反して拡大されていったため、選挙民に訴える政策とそれを実現する行政能力を伴ったのに対して、スペインでは、男子普通選挙が自由主義のプログラムとして1890年という早い段階で導入されたことにある。ここに、19世紀スペインにおける議会主義の「先進性」の逆機能というパラドックスの可能性がある。

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